PROFILE

小野 知一郎(おの ともいちろう)
1980年3月13日生まれ、愛媛県新居浜市出身
やまとグループ株式会社 代表取締役社長
日本商工会議所青年部第43回全国大会 加賀能登の国いしかわ小松大会 大会会長
令和7年度日本商工会議所青年部(日本YEG)会長
経営の目的は「永続」にあるという経営思想を軸に、20社1協会、670名のグループ働きさんを有
するホールディングス経営を営む。令和5年度日本商工会議所青年部「第43回全国大会加賀能登
の國いしかわ小松大会」大会会長を務める。大会間近に発災した令和6年1月1日能登半島地震
の影響により、大会開催が危ぶまれる中、大会開催を決断し、日本YEG加盟全会員417単会登録
(史上初)、YEGメンバー10,859名の大会登録(史上最多)を達成。令和7年度日本商工会議所
青年部 会長就任。
廣田 有希雄(ひろた ゆうきお)
1975年9月15日生まれ、卯年の乙女座、石川県小松市出身
株式会社ヒロタ代表取締役
令和6~7年度小松商工会議所青年部(小松YEG)会長
第4回デジタルデザインコンペティション(日経アーキテクチャー主催)最優秀賞
学生時代を大阪で過ごし、卒業後、家業である設備会社を継ぐため、石川県内の同業種の会社にて数年
間修行。現場管理を経験し、その後家業に入り父親と共に仕事にあたる。代替わりして12~3年、法人化
して10年。仕事内容は配管工事だが、「目には見えないものを大切にしたい」という思いがあり、物質的
な結果ではなく、その先につながる精神的安定の提供をすることを信条としている。

小松YEGとはどういった団体で、どんな活動をしていますか?

廣田
小松市を中心として事業展開されている小規模事業者の中で、50歳以下(55歳まで延長可)の若手経営者の集まりです。現会員数はアンバサダー会員13名を含め、計106名です(令和7年2月28日時点)。令和6年度の全国大会を経て、9つの委員会と3つのプロジェクトチームで取り組んでおり、毎月の例会開催、委員会事業及びプロジェクトチームが取り組んでいる事業等をしています。自分たちのYEG活動によって地域が良くなって欲しい、それがまた自企業に返ってくる、そういったところを中心として活動しています。具体的には講演会、他団体や地域の大学生との交流事業、日本YEGによる研修会、地域の祭りの運営等です。あとは、各種大会に参加し、外部との交流の機会を推進しています。

もう少し突っ込んで…小松YEGの役割とは何ですか。

廣田
これは令和7年度の会長所信にも書かせていただいているんですけど、自分たちYEG世代とその事業や取り組みが、地域経済活性化の中心であるという自覚を持って、YEG活動を通して仲間になったり交流したり知見を広げて活動することによって地域経済は盛り上がると思います。私たちYEG世代が何も活動せず自分のことだけをしているようであっては地域経済に影響を及ぼすことはありません。ですから、そうやって将来を考えて自分達がつながり活動していく中で、私たちYEG世代こそ一番地域経済に影響ある世代だという自覚を持つことが重要です。そのためにもただ楽しむだけではなく、本当に自分の成長につながるように目的意識を持って交流することが大事ですし、もっと地域経済のためになる結果につながるような取り組みをしていきたいと思っています。

今の話を受けて、日本YEGの役割とは
どういったことですか?

小野
日本YEGには『日本YEG WAY』という、日本YEGの目的は何か、日本YEGが大切にしている価値とは何か等の日本YEGでの活動をしていく上での目的を明確に決めています。

日本YEGの役割は、加盟いただいている全国416単会32400名、その先にあるそれぞれの故郷(地域)が永続的に繁栄し得る為に、それぞれが理想を掲げ、現実を俯瞰した時に表出される課題に対し、日本YEGが提供させていただく様々なノウハウや学びの場を大いに活用し、課題解決をしていきながら、それぞれの理想にYEG活動を通して近づけていく。すなわち、日本YEGは単会・YEGメンバー・故郷(地域)が永続的に繁栄していく為に存在していると云えます。

つまり日本YEGの役割は、各単会の
サポート係ということでしょうか?

小野
はい。伴走、そして共に各単会がめざすべき理想を創っていくというコトです。その為にも何の為のYEGなのか?というYEGの目的構築が重要であると念っています。

YEGが地域にもららす影響というのはどういったものでしょうか?

小野
私はYEGにはとても大きな可能性があると念っています。歴史を振り返ると「争い」が主流の時代から、今の世の中は「ビジネス:商い」です。資本主義というプラットフォームが存在します。YEGや商工会議所とは、経済を通した地域づくりが一つの目的となります。ボランティア活動ではありません。

欧米的な資本主義は、「今だけ、自分だけ、お金だけ」に陥りがちですが、欧米的資本主義ではなく、日本的な資本主義=近江商人の三方好の精神や、東京商法会議所(※東京商工会議所の前身)をつくられた渋沢栄一翁が掲げる「道徳と経済の合一」こそが、我々地域のリーダーが為していく為の根源的価値であると念います。

この国が2600有余年連綿と紡いできている念いを次の時代へ「商い」を通して恩送りしていく。YEGはその「商い」を司ることになりますので、大きな役割とChallengeが必要になってきます。

この国にある企業総数の367万社中125万社が中小企業として商工会議所に加盟をされています。実に3分の1の企業が加盟しています。YEGはその商工会会議所の未来を担う若手青年経済人が集まる団体です。我々若者が更なる意志を持ち、Challengeしていけば、必ず世の中は変わる。重要なコトは、それぞれの地域における未来への変革が重要です。小松YEGも大きな可能性がある組織であると念っています。
廣田
小野会長も小松YEGの歴代会長ですし、よく相談もさせてもらってますが、単年度制であるために毎年(方向性が)変わるのであるならば、向かう先がブレて行ったり来たりとなり、結局何もしていないただの楽しい会になってしまいます。そうではなくて、本当に楽しいというのは、何かに取り組んだりして何かを得たときについてくるものだと思っています。去年、一昨年、その前とずっと続いてきているその流れを経て、現状の小松YEGの状態と、日本YEGが掲げていることとうまくブレずに同じ方向を向いて取り組んでいきたい思います。足りない部分は日本YEGに伴走してもらって、外から見たときのアドバイス等をいただきながら進めていければと。そして会長が変わっても5年の中期ビジョンを念頭に計画を立て準備していくことで、小野会長が言っているような、地域に必要なYEG、青年経済人の団体としての存在感を確立していけるんじゃないかな、と思っています。その取り組みとして年間の計画であったり、方向性であったりとか、そういうものはとても大事だなと思っているので、いつも結構悩んで、真剣に時間をかけて構想を立てています。

小松YEGは(設立して)25年間ありますけど、比較的歴史も浅く、活動が密となったのも最近なので、新たに積み上げていくということに対する妨害もないし、過去事例にもとらわれないし、実はやりやすいんです。そういう意味で小松YEGは本当にブレずに目標に向かって一から積み上げていけるというところが魅力だなと思っています。そこをきっちりとやっていきたいので最初に、目的意識のある年間計画があっての事業。令和6年度やってみて、機能していないところは変える。2年間の途中であっても組織を変えてちゃんと機能するようにする。役割イコール機能だと思っているので、機能するように、令和7年度もそういった思いで組織をつくっています。

「地域の永続」について考えをお聞かせください。

小野
我々企業経営を営む者は、お客様や働きさんが居なければ成り立ちません。この国は大きな人口減少が進んでいます。2050年には約40%の市町村が消滅する可能性があるのと、2100年には現行出生率であれば、5000万人をきる人口動態が予見できます。シンプルに経済の枠としては市場(顧客数&働きさん数)が半分以下になるということです。すなわち、地域も企業も現状延長線上に未来はないということが云えます。

渋沢栄一翁が「地域の発展なくして、経済の発展なし」と残されていますが、翁の時代は国や行政による公共事業を通した各種インフラ整備における地域の発展(中央集権施策や大企業が儲け、中小零細企業に富が分配していく)を戦略的に進め、世界の中の経済大国たるこの国の地位をつくりましたが、これからは逆です。まず国や行政の役割と商い=経済の為すべき役割を明確に線引きする必要があります。その上で、地域=民がそれぞれの長所を活かし、非合理の中にある真の合理性を表現する商いに変容が必要です。政治で顕せば、中央集権ではなく、地域主権、地域政党制や省庁制度の選択と分配です。そこで出てくる非効率はDXやAIで効率化していく。すこしマクロの視点で話していますが、シンプルに各地のYEGがその地域で連綿と紡がれた、自然や伝統、文化、人と人の繋がりというその地域でないと表現できない長所を今の時代に合わせたArt&Designと私は表現していますが、表現の仕方に変容させていく。その一歩をYEGや青年経済人と言われる我々が踏み出していく。これが地域の永続的繁栄に繋がるための「新たな未来的経済価値」として言行一致すべき部分かと念います。

全国大会や地域の祭である「どんどんまつり」について、
小松YEGとしてどのように取り組まれたかを聞かせていただけますか?

廣田
「どんどんまつり」は僕たちが小さい時からありまして、あんどん行列に参加したり、親に連れられて行ってましたけど、改めて大人になって行くかというと行かないですよね、なかなか。そこをYEGとして(令和8年度の)50回大会に向けて、より心が集まるようなお祭りにしていきたいと取り組んでいます。その第一歩としての令和6年度はスローガン通りにうまくいったと思っています。従来は市民参加型が中心のステージでしたが、それだけじゃ魅力が足りなくて、プロの太鼓の方を誘致したステージはすごく良かったですし、ああいうここぞっていうところに企画を練って、プロを誘致するなど、魅力あるお祭りにしていけば、それをまた重ねていけばブランド化するんだろうなと思っています。その取り組みは3か年計画で取り組んでいます。

あと全国大会についてですが、小松YEGの中での効果を言えば、過去にない成功事例になったということです。そしてその目標を掲げてスタートを切ってみんなを引っ張ったのが小野会長。ただそこについているメンバーがそれぞれの役割で、仕事(本業)をしながらも全力を尽くしてやっている。それも横で連携しながらしている。その苦労したことが結果に出てて、過去一の大会だと、石川大会すごい良かったと、他のところに行った時にも言われる。そういう貴重な成功事例になってて、小松でもこれだけのことができる!というか・・。例えばそれがある場合とない場合では次の取り組みをしたときに大きく違ってくるんです。ある場合だと基本的なところをサラッとできるだけではなく、できる!やれる!前提で皆が動くことによって、より中身の良い魅力あるものをつくれます。特に若いメンバーにとっての成功事例として、小松YEGの中に凄い財産というか価値が蓄積されたと思っています。

日本YEGの立場から、全国大会ってどういう
ものかというのを教えていただけますか。

小野
日本YEGには「日本YEG三大事業」というものがあって、ブロック大会、全国リーダーズ研修会、そして全国大会があたります。この全国大会は全国のYEGメンバーが相集い、当年度の総括と次年度への展望を表現する大会です。全国大会は日本YEGで最大の事業で、地域の永続的繁栄を成し得るための交流と連帯・連携・研鑽を表現する場になります。また、全国大会開催地における決定は輪番制となりますので、小松で開催することは我々が生きている内にはもう二度とない大会になります。

昨年度開催された、いしかわ小松大会は本当にいい事例になりました。小松YEGで云うと、目指すべき小松ヴィジョンを達するために、この全国大会が大きな後押しをしてくれました。能登地震という災禍が未知への一歩を踏み出す気づきとなりました。今の時代、資本主義というプラットフォームの中で、便利になればなるほど、人と人とが分断をしてもいきていける世の中で、DXやAIが更にその状態を後押ししていく。本当に我々は人間足り得るのか?人間らしさとは何か?ということを大会テーマである「Power of Community」という言葉で今の時代へのテーゼを投げかけていました。それをこの災禍を通して、全国大会を通して、多くのYEGメンバーに気づきを投げかけることができたと感じていています。

「商い」という言葉が出ましたけど、自企業が地域にもたらす影響について
教えていただけますか。

小野
私は会社の規模の大小に関わらず、大事なことは各企業が自立、自発、自走して、地域の公共財たる自覚を持つこと。今は中央集権ではなく地域主権、民から国づくりをしていくんだという意志を持つことです。ここCHABU HASADANI(取材場所)は、その思想の象徴的存在として具現化すべく、プロジェクトを推進してまいりました。「今だけ、自分だけ、お金だけ」の資本主義に行き過ぎた世の中へのアンチテーゼとして、このHASADANIという地域には、この国が紡いできた人間生活中心主義や日本人的伝統精神という心の在り方が根付いています。あとはそれを経済としてどうマネタイズするか、また、どのようにすれば人が集まってくるかという仕組みをつくりさえすれば、私は本質的に地域の永続的繁栄につながると念っています。全国には他にも同じような(消滅していくであろう過疎)地域がたくさんありますから、そこで同じようなことができれば、本当の意味での民から国をつくるということができるのでないでしょうか。これが、今の時代にとてもマッチしています。懐かしさの中にArt&Designを表現する。これこそが新たな未来的経済価値を生み出すと念っています。